駐車中などに車を擦られていたことに後から気づくと、驚きや怒り、不安が一気に押し寄せるものです。加害者がその場にいなくても、冷静に対応すれば解決できるケースは多くあります。あらかじめ対応の流れを知っておくことで、万が一の時にも落ち着いて対処できるでしょう。

本記事では、車を擦られた時の対処法と修理代の請求方法を紹介します。また、車に擦り傷ができるケースや具体的な修理方法、擦られないための対策方法なども解説するので、ぜひ参考にしてください。

車を擦られたと気づいた時、焦って何をすべきかわからないという方が多いでしょう。ここでは、車を擦られたのを後で気づいた時の対処法を6つ紹介します。

車が擦られているのに気づいたら、まずは警察に連絡しましょう。

他の車に擦られたと判明した場合、相手がその場にいない場合は「当て逃げ」に該当します。道路交通法上、当て逃げは「物損事故」とみなされ、警察への報告義務が課されています。報告しない場合は、加害者だけでなく被害者も刑事処罰を課される可能性があります。

ただし、私有地（個人の駐車場や月極駐車場など）で起きた場合、道路交通法の適用外となるため、通報義務はありません。

とはいえ、事故の事実を証明する「交通事故証明書」や事故の状況などを証明する「実況見分調書」の書類は、警察への通報がなければ発行されません。そのため、たとえ少しの被害だとしても必ず連絡しましょう。

なお、いたずらで車に傷をつけられた場合も「器物損壊罪」に該当します。

ドライブレコーダーが搭載されている車なら、犯人が映っている可能性があります。ただし、ドライブレコーダーのなかには、時間の経過とともに古いデータから削除されてしまうものがあるため、擦られたのに気づいたら早めに確認しましょう。

また、ドライブレコーダーを搭載していなくても、近くの車に搭載されているドライブレコーダーに記録が残っている可能性があります。車の持ち主に確認したうえで、ドライブレコーダーの記録を確認させてもらうのもポイントです。

被害現場の周辺に防犯カメラがあれば、映像を確認させてもらいましょう。第三者が目撃していた場合でも、防犯カメラをチェックしておくと十分な証拠がそろい、犯人特定につながりやすくなります。

ただし、防犯カメラもドライブレコーダーと同じように、時間が経つと古いデータが消えてしまうものがあります。削除されてしまう前に、早めに確認しましょう。

また、防犯カメラの映像を確認できるかどうかは、その設置者や施設管理者の判断に委ねられます。そのため、早い段階で警察に相談し、立ち会いのもとで映像を確認するようにするとスムーズです。警察が介入していることで、施設側も協力的になりやすい傾向があります。

車が擦られているのに気づいたら、その場で傷の写真を残しておくことが大切です。擦られていることに気づいているのにもかかわらず運転を継続すると、その後に交通事故などにあった時、傷の原因や状態が不明瞭になってしまいます。

写真を残す際は、車を擦られた部分だけではなく周辺の状況や傷を発見した場所なども撮影するのがポイントです。車が擦られた時点で撮影すれば、日時も一緒に記録されるため、事故が発生した日付や時間の特定につながりやすくなります。

また、傷の写真は示談交渉を行う時に証拠として提示できます。一見関係なさそうな写真でも証拠につながるケースがあるため、状況の詳細がわかるよう多めに撮影しておきましょう。

車を擦られた場合、修理が必要になるため、保険に加入している場合はまず保険会社に連絡しましょう。保険の利用の有無にかかわらず、車を擦られた時点で連絡するとどのように対処すべきかサポートしてもらえます。

修理費用が高額で自己負担が難しい場合でも、事前に相談しておくことでスムーズに対応が進みやすくなります。また、保険会社によっては、保険金の支払いだけでなく、ロードサービスの手配や示談交渉を代行してくれる場合もあります。

車を擦った相手が特定できている場合は、示談交渉の準備を進める必要があります。ただし、当事者同士で直接やり取りをすると、感情的になったりトラブルに発展したりする可能性があるため注意が必要です。

一般的には、保険会社が間に入って示談を進めるのが安心で確実です。これまで数多くの示談対応を行ってきた実績があるため、スムーズかつ適切な対応が期待できます。担当者と連携しながら、冷静に交渉を進めましょう。

車に擦り傷がつく時は、さまざまな要因が関わっている可能性があります。ここでは、車に擦り傷ができるケースを5つ紹介します。

飛び石による擦り傷は、車に傷がつくケースのなかでもよく見られる原因のひとつです。前方を走っている車のタイヤの溝に挟まった石が、何らかの衝撃で外れて後方に飛んでくることで発生します。

運転中に石が飛んでくるケースが多いため、どうしても避けるのは難しいです。また、砂利道はスピードを出して走っていると、自分の車のタイヤから石が飛んできて傷がついてしまう場合もあります。

路上にある障害物によって車に擦り傷がつくケースも、飛び石と並んでよくあるトラブルのひとつです。ここでいう路上障害物とは、道路にはみ出している木の枝などを指します。

道幅に余裕があれば避けられますが、狭い道路では避けきれずに車を擦ってしまうことがあります。とくに枝が長くて固い場合、車のボディに深い線傷がついたり、場合によっては窓ガラスにまで傷が及ぶこともあります。

駐車中の車は、ドアパンチや当て逃げなどによって擦り傷がつくことがあります。隣の車がドアを開けた際にぶつけたり、車をぶつけてそのまま立ち去った場合は「当て逃げ」として扱われます。

当て逃げされた場合は、相手がその場にいないからといって諦めず、ドライブレコーダーや防犯カメラを確認したり、第三者の目撃がないか調査したりすることが大切です。前方に駐車されていた車のドライブレコーダーに映っていたケースもあるため、周囲の人に手助けしてもらうのもよいでしょう。

洗車の際も、車に付着したゴミや埃が原因で擦り傷がつくことがあります。これは洗車機そのものに問題があるわけではなく、車の表面に残った細かい汚れが原因となるケースがほとんどです。

対策としては、洗車機を使う前に軽く予洗いして、砂や埃を落としておくのが効果的です。また、手洗いの場合でも、いきなりブラシやスポンジでこすってしまうと傷がつく恐れがあります。

とくに屋外に駐車している車は、ゴミが付着しやすいため、洗車前にしっかり確認するようにしましょう。

小さな子どもや酔っ払いなどによるいたずらで、車に傷をつけられてしまうケースもあります。石や釘、硬貨のような硬いもので引っかかれたり、重い物をぶつけられたりと、その手口はさまざまです。

子どもが多いエリアや繁華街に駐車する場合は、こうした被害に遭うリスクが高まります。万が一、いたずらによって車に傷をつけられた場合は「器物損壊罪」に該当するため、発見した時点で警察に通報することが大切です。

車を擦られた時、傷の修理代を誰が負担しなければならないか、また保険は利用できるかなど、気になる点が多くあるのでしょう。ここでは、車を擦られた時の修理代の負担と保険について解説します。

車に擦り傷をつけた加害者が特定された場合、加害者が加入している保険会社に賠償請求できます。ただし、加害者の保険会社とのやり取りは、被害者自身が行う必要がある点に注意しましょう。

また、加害者が任意保険に加入していない場合は、直接本人に修理費用の賠償を求めることになります。ただし、個人間での賠償交渉は感情的なトラブルに発展しやすく、話し合いがまとまらない場合には裁判にまで発展する可能性もあります。

なお、加害者が特定できない場合は、自分で修理費用を負担しなければなりません。費用の支払い方法は、自費で払うか、自身が加入している車両保険を使うかの2つです。

加害者を特定できた場合でも特定できなかった場合でも、保険を使って自己負担分の軽減が可能です。加害者が特定できた時は、車両保険の一般型とエコノミー型のどちらかが補償対象となります。

加害者を特定できなかった時は、契約内容によって保険金を受け取れる可能性があります。利用できる保険金額は、車の価値や加入している契約内容によって異なります。まだ保険を利用する予定がない方も、どれくらいの保険金を受け取れるか契約内容を確認しておきましょう。

ただし、保険を使用すると翌年の保険料が上がるため、修理費用が少額の場合は自費での修理を選ぶのもひとつの手です。保険を使うか迷う場合は、まずは保険会社に相談してみることをおすすめします。

車を擦られた場合、加害者が特定できていれば修理費用を請求できますが、そのためには正しい手順を踏むことが大切です。ここでは、車を擦られた時の修理代の請求方法を3ステップに分けて紹介します。

まずは警察に連絡し「交通事故証明書」を発行してもらいましょう。交通事故証明書がなければ、修理代の請求をスムーズに進められなくなる恐れがあります。

その後、修理工場などで見積書を作成し、加害者の保険会社へ提出します。ただし、示談が成立する前に修理を進めてしまうと、傷と事故の因果関係が否定される恐れがあるため、先に修理を済ませないよう注意が必要です。

加害者側に修理費用の見積書を提出すると、相手側から示談案が提示され、そこから交渉が始まります。交渉の内容は主に過失割合や示談金額に関するもので、やり取りは対面ではなく、電話やメールなどを通じて行われることが一般的です。

交渉は、双方が合意するまで何度も繰り返されます。加害者側の提案に対して被害者が納得しなければ、新たな示談案が再提示され、結果的に交渉が長引くこともあります。お互いに納得のいく条件で話をまとめるには、ある程度の時間がかかることを理解して臨むことが大切です。

また、慰謝料については「物損事故」として扱われた場合には請求できません。身体的な被害（ケガなど）がある場合のみ、慰謝料の請求が可能です。

なお、示談がまとまりにくいと感じたら、早めに保険会社や弁護士などの専門家に相談することで、トラブルを回避しやすくなります。

交渉を経てお互いに合意したら、示談成立となります。示談の成立後は、当事者それぞれの名前や事故車両のナンバープレート、事故の発生年月日、発生場所、賠償金額、支払い方法、振込先などが記載された示談書が届きます。

示談書に目をとおして内容に間違いがなければ、署名と捺印をし、加害者が加入している保険会社に返送しましょう。署名と捺印をすると原則示談内容の撤回や再交渉ができないため、しっかり内容を確認することが重要です。

保険会社からの補償を受ける際、示談金の入金は示談書を返送してから2週間程度が一般的です。ただし、加害者が保険に加入していなければその限りではありません。

確実に示談金を支払ってもらうためには、示談書を公正証書にする、連帯保証人を立ててもらう、などの対策をするとよいでしょう。また、一括払いか分割払いかは、交渉の段階でしっかり話し合うことをおすすめします。

車を擦られてできた傷を修理する場合、修理方法を決める必要があります。ここでは、車を擦られてできた傷の修理方法を2つ紹介します。

車についた擦り傷のなかには、自分で修理できるものもあります。材料の調達から作業まで自分で行うため、業者に依頼するよりもコストを大きく抑えられるのがメリットです。修理に必要なアイテムは、カー用品店やネット通販でそろえられます。

修理アイテムは以下のとおりです。

●コンパウンド
●ワックス
●タッチペン
●クロス
●スプレー
●パテ
●シール

しかし、手順や道具の使い方を間違えると、かえって傷が目立ったり悪化したりする恐れがあります。そのため、事前に説明書を読んで内容を理解してから、修理を進めていくのがポイントです。

市販のアイテムを使って修理できるのは、あくまでもごく浅い擦り傷に対してのみです。なお、自分で修理しても問題ないかわからない時は、水をかけて判断する方法があります。

水をかけた時に一瞬傷が目立たなくなるようなら、クリア層のみが傷ついている可能性が高く、自分でも補修が可能と判断できます。一方で、水をかけても傷がはっきり見えたり爪で撫でた時に明らかに引っかかったりする場合は、傷が深い可能性があるため業者への依頼がおすすめです。

自分での修理が難しい場合や、仕上がりの美しさを重視したい場合は、専門業者に依頼するのがおすすめです。擦り傷の修理を依頼できる業者には、ディーラー、板金塗装業者、カー用品店、ガソリンスタンドなどがあります。

自分で修理するよりも費用はかかりますが、プロの技術で丁寧に仕上げてもらえるため、見た目も機能面も安心です。また、プロに依頼することで、擦り傷以外の不具合や劣化にも気づける可能性があります。

どの業者を選ぶかは、目的や重視するポイントによって変わります。純正パーツを使用し、品質や仕上がりにこだわりたい場合はディーラーがおすすめです。一方、コストを抑えながら修理したい方には、板金塗装業者が適しています。

比較的軽度な擦り傷であれば、カー用品店やガソリンスタンドへの依頼も選択肢になります。とくにガソリンスタンドは、給油のついでに手軽に依頼できる点が魅力です。

費用をできるだけ抑えたい場合は、複数の業者から見積もりを取り、料金・修理期間・代車の有無などを比較しましょう。同じ条件で比較することで、納得のいく業者を選びやすくなります。

こちらの記事では、板金修理の費用について解説しています。修理できる内容や流れも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

車を擦られたからといって、必ずしも相手に修理代を請求できるとは限りません。そのため、日頃から車を擦らない対策をとっておくことが大切です。ここでは、車を擦らないための対策を4つ紹介します。

ドライブレコーダーを取り付けることで、車へのいたずらや当て逃げの抑止効果が期待できます。また、万が一車を擦られたとしても映像が証拠として残るため、相手の特定や保険対応にも役立ちます。

ドライブレコーダーにはさまざまなタイプがあり、運転中のみ作動するもの、駐車中も監視できるもの、周囲の動きを感知して録画を開始するものなど、用途に応じて選べます。

録画範囲にも違いがあり、前方のみを記録するタイプ、前後をカバーするもの、車両の全周囲を360度記録できるタイプなどがあります。擦られた際の状況をしっかり記録したい場合は、駐車監視機能付き・360度対応モデルの設置がおすすめです。

ただし、常時録画タイプの場合は大容量のメモリーカードが必要になったり、バッテリーへの負荷がかかったりすることもあるため注意が必要です。コストを抑えたい場合は、人の動きや衝撃を感知して録画するセンサー式のモデルも検討するとよいでしょう。

価格や性能に幅があるため、防犯性と予算のバランスを考えながら、自分に合ったタイプを選ぶことが大切です。

自宅周辺で車を擦られる心配がある場合は、敷地内に防犯カメラを設置するのがおすすめです。防犯カメラはドライブレコーダーよりも広い範囲を映せるため、ドライブレコーダーに映らなかった場面や人物を記録できる可能性があります。

また、ドライブレコーダーと同様に、防犯カメラには犯行を抑止する効果もあります。とくに、自宅の敷地内やガレージにカメラが設置されていると「防犯意識が高い家」と認識され、いたずらや当て逃げなどのリスクを減らせるでしょう。

さらに、防犯カメラと合わせてセンサーライトを設置することで、夜間の視認性を高め、車上荒らしや不審者への抑止効果も期待できます。暗がりで急にライトが点灯すると心理的なプレッシャーが働き、犯行を思いとどまらせることにもつながります。

ただし、防犯カメラの設置には初期費用がかかります。複数台の設置が難しい場合は、本物のカメラにダミーカメラを組み合わせるのも有効な対策です。外見から本物と見分けがつきにくいため、コストを抑えつつ一定の抑止効果を期待できます。

車を物理的な衝撃や擦り傷から守る方法のひとつに「ボディカバー」の使用があります。ボディカバーとは、車全体をすっぽりと覆うカバーで、隣の車との接触や軽度な擦れから車体を保護してくれます。たとえ軽く擦れた場合でも、カバーがあることで直接傷がつくリスクを大きく減らせます。

また、いたずら防止としてもボディカバーは有効です。車に傷をつけるようないたずらは、短時間で行える車が狙われやすいため、カバーを外すというひと手間があるだけで、ターゲットから外される可能性が高くなります。

一方で、ボディカバーをかけている車は「高級車かもしれない」と思われ、車上荒らしや盗難の対象になってしまうリスクもあります。そのため、ボディカバーだけでなく、防犯カメラやセンサーライトなどと併用することで、防犯効果を高められます。

カーセキュリティとは、車に異常があった時に音や光を出したり、持ち主に知らせたりするものです。車上荒らしの対策に導入されるケースが多いですが、いたずらで車に傷をつけられる場合に対しても有効です。

カーセキュリティによって、異常が起きた時の知らせ方が異なります。音や光を出す警報タイプや、異常時に登録したスマホに通知されるタイプがあります。どちらの機能も備わっているカーセキュリティーなら、より防犯性が高まるでしょう。

車を家に置いて外出する頻度が多い方は、通知機能が備わったカーセキュリティーがおすすめです。車に異常が起きた時間帯がスマホに記録されるため、帰宅後にドライブレコーダーや防犯カメラをチェックする時に便利です。

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車を擦られたことに後から気づいた場合は、まず警察に連絡し、ドライブレコーダーや周囲の防犯カメラを確認することが重要です。相手がその場にいない場合は、当て逃げとして扱われ、警察による捜査が進められることになります。

修理費用は、加害者が特定できており、保険に加入している場合には相手の保険会社に請求できる可能性があります。ただし、相手が保険未加入だったり、連絡が取れない場合は、支払い交渉がスムーズに進まないこともあるため注意が必要です。

修理を依頼する際は、ディーラーや板金塗装業者のほか、カー用品店やガソリンスタンドでも対応が可能です。

全国1,400店舗以上を展開する「ピッカーズ」では、多くのガソリンスタンドに併設されており、給油のついでに立ち寄れます。また、自社工場での部分補修により、費用を抑えつつ、スピーディかつ丁寧な仕上がりを実現しています。

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